keikoのお出かけ日記
| (120)春の日差しの尾道を歩く 春です。3月28日(日)、このところ近場のお出かけが多かったの で、お出かけの虫がうずうずとうごめいているらしい夫は、「今日は尾 道へ行く」。 色々と仕事が山ほどある私の事情はかまわず宣言するものですから、 私も思い切り、出かけました。 11時20分ごろ出発、倉敷インターから高速道路を利用します。いいお 天気、春らしく、山も春の色です。俳句では山が春の色になることを 「山笑う」というそうですが、微笑みかけるような山の色でした。マス カットなどの果物の産地、船穂町あたりは新しいビニールを張ったハウ スに日が反射していました。これが時期がいいと、桃の花が満開で桃源 郷のように見えるのです。 12時少し前、福山サービスエリアで休憩。数年前に尾道に行ったとき は、食べ物やさんが見つからなくて、すきっ腹で1時間くらい歩きま わって腹が立ってきたことが思い出され、いっそここで食べていくか、 ということに。 サービスエリアのレストランは、9分どおりの入りでした。夫にとっ てコレステロールと油物が大敵なので、和風の「鞆絵弁当」950円を選 びました。コーヒーは200円。食券を買うと、席に着く前にその食券を 持っていったのは、かっぷくのいい中年男性でした。よく見ると働いて いたのは食券売場のおねえさん以外は皆男性でした。経営が鞆鉄道とい うことなので、もしかしたら、バスの運転手さんだった人が配置転換で やってきたのかもしれないなと思います。下腹の出た男性には、お盆を 持って歩きまわる仕事は健康にいいかも知れませんが、どうしても無 骨、という感じが否めません。でも一生懸命サービスに努めているのが 見て取れ、それなりにがんばっているなと思いました。 鞆絵弁当は、鯛の刺身が3切れほどと、タコの足の天ぷら、出し巻き 卵とエビの煮物、人参とインゲンの信田巻き、ハマチの照り焼き、味噌 汁と香の物。この香の物が、紫蘇の実が入っていておいしかったです。 塩漬けのしその実、持て余し気味でしたが、漬物をする時の塩代わりに するとおいしいのかも知れない、うちの庭のしその実も今年はこうして みよう、と思いました。 12時30分出発、12時37分、福山西インターで降り、1,600円。 尾道東で降りるのを忘れ、この前と同じように、向島まで橋を渡ってし まい、島のゲートで150円の料金を払い、仕方なくUターン。引き返す にはまたゲートで150円かかったので、道に迷って300円の損害。 尾道の町では、海に面した、市役所のすぐ西の駐車場にこれまでは入 れていたのでしたが、駐車待ちの車が5台くらい並んでいたのであきら めて、海岸通を西へ。通りにはいくつも小さい有料駐車場がありました が、持ち主がこちらを見て手でバツを作って見せるなど、いずれも満車 状態。とうとうJRの尾道駅前まで行って、今度は線路沿いの国道2号 を東へ。 やっと「さくらパーキング」という自動のゲートがある駐車場から1 台出たので、入れることが出来ました。 ほっとして、国道2号とJR山陽本線を越え、山側へ石段を上りまし た。 暖かくなったせいか、この日は尾道中が観光客で一杯。これまで4回 くらい行きましたが、一番多く人がいたと思います。 人が2人並ぶともう一杯のような細い石畳の道が東西にうねうねと上 がったり下がったりしながら続いています。その途中に、去年も行った 「おのみち文学の館」があります。元はさる企業のお偉方の奥さんが、 お茶を教えていらしたという和風の家です。入場料は志賀直哉旧居と共 通で300円。入り口の受け付けは去年と少し違っていましたが、展示室 の和室は同じようでした。縁側から庭越しに晴れた空と尾道水道の海が きれいに見えます。 縁側に面した部屋から受付そばの奥まった部屋へ周り、さらに東の林 扶美子記念室へと回るように順路が整備されていました。 始めのお座敷では、「快傑黒頭巾」や雑誌『少年倶楽部』に連載され たという「豹(ジャガー)の眼」の著者高垣眸などのことが展示され、 夫が子供の頃読んだ記憶があると言っていました。 奥まった部屋では、少女小説家の横山美智子のことなどが展示されて いました。横山美智子という名前には聞き覚えは無かったのですが、 ケースに展示されていた、彼女と夫が作っていたという『金の船』(後 に『金の星』と改名)という雑誌の開かれたページには、昔小学校の教 科書で習った「菜の花と小娘」という志賀直哉の短編が載っていました ので、なつかしく思いました。ちょうど今頃の季節のほのぼのとした作 品です。 林扶美子展示室に入る前に、年賦があったので、これまでは飛ばして いたのを丁寧に読みました。尾道時代は、それまでの子供時代義父が行 商で九州を点々としていたのにくらべ、尾道の中では何度か転居したも のの、6年ほど住んで小学校と女学校へ行ったそうです。いずれも2階に 間借りする生活だったようで、貧しい生活から抜け出すには、一流に学 ぶのが大切、と女学校への進学をしたようです。 東のお座敷には、東京の扶美子の書斎で使われていた机などを移して 再現したというコーナーは昨年に変わらず、ただ亡くなる直前に偶然撮 影されたという写真パネルの場所だけは変わっていました。 つい最近、林扶美子の人生を描いた舞台「放浪記」を演じる森光子の 83歳にしてでんぐり返りをする体力を保持する努力を聞いたばかりだっ たので、その「放浪記」の著者のことをよりよく知ってよかったと思い ました。 書斎コーナーの縁側に椅子があったので、少しの間そこに座って、尾 道大橋の方面も見渡せる瀬戸内の箱庭のような景色を眺めました。 おのみち文学の館を出ると、さらに西へ、以前たどったのとは逆コー スで遊歩道の石畳をたどり、志賀直哉旧宅の方へと行きました。ここも 急傾斜地の上に立つ小さな三軒長屋の東の部屋がそれです。このコー ス、実はトイレに困るのですが、この場所だけは小さな休憩所に汲み取 り式ながら公衆トイレが建っています。 以前訪れた時は、ここの受け付けにいたボランティアの男性から、尾 道の歴史や街の成り立ちなどを詳しく教えていただいて非常に興味深 かったのですが、今回の受付の男性は性格が内気だったのか、それほど 詳しくは教えてくださいませんでした。ただ、志賀直哉の父が群馬県の 鉱山主で、お金持ちだったので、ここの家賃も1年分前払いしていたの に、半年しかいなかったということでした。この家で小説「暗夜航路」 の最初の構想や、「清兵衛と瓢箪」を書いたそうです。 そこからさらに西へ行って少し下ると、吉備津彦神社という岡山と同 じ名前の小さなお宮があり、お寺めぐりコースになっていました。光明 寺、持光寺と周り、持光寺を出て見ると、向こうの学校の壁の陰になっ ている桜の花が一杯咲いていました。尾道で見た中では一番見事な桜で した。林扶美子も通ったという、土堂小学校でした。 そこからは幅の広い立派な歩道橋が、JRと国道2号をまたいで商店 街方面へ降りるように出来ていました。 歩道橋を降りた商店街のとっつきに、「アンティーク茶房 扶美子」 という名前の喫茶店があり、林扶美子の旧宅がその奥にあるというの で、すぐ入って見ました。ちょうど店の奥の中庭に面した席が空いたと ころだったので、そこに座り、手書きのメニューを見ると、「放浪記 セット」が和菓子とお抹茶で700円、「扶美子セット」がケーキとコー ヒーまたは紅茶で700円など。夫は例によってアイスレモンティー、私 は扶美子セットでアイスコーヒーとチーズケーキにしました。 中庭の向こうに建っていた小さな建物が、扶美子が大正6年から7年 に、小画工から女学校へ上がる頃に住んでいた所ということでした。横 のガラスのドアを開けて見学に行ってみました。急で狭い階段を上がる と、上は階段部分を含めて6畳、実質は5畳ほどの部屋で、ここに親子3 人で間借りしていた扶美子の家の貧しさがわかる気がしました。 休憩の後、商店街に沿って駐車場まで歩く途中に、去年は立ち寄って お昼を食べた、元銭湯の建物をそのまま利用した「ゆーゆー」というユ ニークな喫茶店の前を通ると、リュックをしょった観光客の人だかりが 出来ていて、ちょっとした観光名所のようになっていました。脱衣室が 物産販売コーナーになっていて、浴槽のあたりが喫茶になっています。 夫が入るので、私も入って、八朔ゼリーだの焼物だのの品を見るうち、 歌手の谷村新司が立ち寄ってエッセイを書いたものの掲示を見つけまし た。やはり外観に引かれてここに入ると、白い杖をついた常連らしい人 が入ってきて普通に「いつもの」を食べて出て行くまでを見て、尾道の やさしさに触れたような気がした、というものでした。去年来た時には 無かったから、その後立ち寄ったのかな。 また、昔銀行だった?建物が観光案内所のようになっていて、そこ で、昔「おしん」が子連れで魚の行商をする場面でもちょっと出たよう な、尾道でもよく見かけた魚を売る木の手押し車や、紙芝居の自転車が 置いてありました。夫が紙芝居がなつかしいと言っていました。 帰途は3時30分ごろ福山西インター、4時5分倉敷インター、1,600円で した。 桜が咲き始めるいい時候になったせいか、人が多かった尾道、忙しい中 でしたが行ってみて海の見える高台の景色と、文学者の足跡に触れて気 分転換できてよかったと思いました。 参考ホームページなど Keikoのお出かけ日記(71)坂をたどって尾道文学の館へ (2003 年3月22日・記) http://kurashiki.to/magazine/keiko2/071.htm 横山美智子 http://homepage2.nifty.com/ONO_MICHI/MENU/sannichi2002/20020913a.htm 志賀直哉 「菜の花と小娘」 http://sun-cc.juen.ac.jp:8080/~yuji/siga-nanohanatokomusume.htm a.. 放浪記(林扶美子)「女人芸術」(10月〜) <初恋に破れ、傷ついた心を詩入りの日記につけたノートから生まれ た> 尾道文学のこみち http://homepage2.nifty.com/senkoji/bungaku/kanko/ |
![]() 1.国道2号線から北へ、山側に上る石段の道。尾道の人はきっと足腰が丈夫になりますね。 ![]() 2.林扶美子の書斎の調度品を移設したもの。 ![]() 3.おのみち文学館の林扶美子記念室からの風景。 ![]() 4.アンティーク茶房 扶美子の店の中庭の奥にある扶美子旧居の2階。 ![]() 5.アンティーク茶房 扶美子外観。 ![]() 6.紙芝居屋さんの自転車と、魚の行商の手押し車。 ![]() 7.ユニーク、お風呂屋さんの建物をそのまま利用した喫茶「ゆーゆー」 |
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