(106) 日月譚のゆで卵、台中の豚足、フルーツティー

 2003年11月15日、台中金典大飯店の朝は、やはり前日にレス
トランに行って朝食を申し込むと、日本語の片言をしゃべるコックさん
の通訳で食券を買うことができ、無事にありつく事ができました。
 パンが多種類、中華のおかゆやビーフン、揚げ物、和食のご飯や生卵、
チーズにハム、ジュースや豆乳、牛乳、コーヒー、野菜、果物多種類。
 従業員が多数いて、さっと終わったお皿を片付けたり、汚れた鍋の周
りを拭いたり、料理の補充をしたりと働いていました。
 欧米人、台湾人、中国、香港方面から来ているらしい人、日本人と、
話を聞いてみないと何人やらよくわからない人が交じり合っていました。
隣は欧米人と、反対隣は関西の日本人。日本語につい聞き入りました。

 9時にロビーに加藤さんが迎えに来てくれ、娘さん運転のSAABで、
大きな湖の観光地、日月譚へと出かけました。だいたい1時間半から2
時間くらいの距離でした。
 台中の街を走るときに、窓から見た街の景色は、ビルというビルの外
壁からせり出したたくさんの看板。意味はよくわからないながらも、漢
字の洪水に、読んで楽しみました。
 日本でもよく見かけるセブンイレブンの看板は、そのまま同じでした。
同じコンビニでも、「全家便利店」。これはファミリーマートです。な
るほどー。「乾鮮商店」はクリーニング屋さん。汽車というのは、自動
車のこと。輪胎というのは、タイヤのことなどなど。
 途中の大きな交差点で信号待ちをしていると、日本でも農家の主婦が
よくかぶっている頭巾をかぶった女性が窓から何か売りに来ました。
タオルを敷いたバットに細い針金で束ねた物をたくさん並べています。
加藤さんが買ったのを見せてくれました。香蘭という、バナナの形の芳
香のする花だそうで、ルームミラーにぶら下げました。私たちへの気遣
いだったようです。

 めざす日月譚の湖は、日本で言うと十和田湖くらいの規模になるようで
す。
 最初に行ったのは、文武廟という、孔子様を祭った廟で、3年前の台湾
中部を襲った地震で壊れたのを再建したちょうどそのお祭のような感じで
赤いちょうちんで飾られていました。
 屋根も柱も、日本とはまるで違う、過剰なまでの装飾、色の洪水。龍の
浮き彫りのある石の柱。山門の内側には、おみくじを売っているところが
あり、日本語を覚えていて話せる老人がいて、パンフレットの写真を見せ、
このダムは日本軍が造ってくれた、などと話してくれました。
 おみくじを引くのは、ただくじになった棒を引くだけでなく、その棒で
いいかどうかを、一対のソラマメ型の木を地面に落とし、それの片方だけ
が裏返った状態なら可、両方がウラまたは表だと不可なので、別の棒を引
き、またそのソラマメ型の物を落としてそれでいいかどうかを占ってから
おみくじをもらうのだそうでした。
 
 野外で孔雀を飼っている孔雀園を見たあと、西遊記で有名な三蔵法師の
玄奘を祭った玄奘寺には、夫もちょっと疲れていて上りませんでした。
 その門前のみやげ物屋さんで、なんだかいい香りがする巨大な鍋がある
と思ったら、加藤さんが、「ここの卵は有名だから」と、1人2個ずつ買っ
てくれました。八角の香りやら、ウーロン茶のような香りやら、いろんな
香草を入れた鍋で煮てあるのでおいしいそうで、後で聞けば、娘さんもデ
ートでオートバイでこの日月譚まで来ては、この卵を3個くらい食べると
おなかもふくれ、お金をかけずに遊べるとのことでした。熱々ですぐには
食べられないので、しばらく車内に置いてから食べると、醤油味とも違う
味と、香草の香りがして大変おいしいものでした。
 
 昼は、そのあたりの店は不衛生なのでと、加藤さんが選んだのはカフェ
風のイタリア料理店でした。外のパラソルの下のテーブルが心地よい気温。
テーブルのそばにはラベンダーの咲く花壇がありました。
娘さんはビーフストロガノフみたいなご飯物、私たちは、漢字のメニュー
で加藤さんに聞きながら、魚介のスパゲティ、と思ったら麺は真っ黒で、
イカ墨でした。加藤さんはミートソースみたいでした。台湾でスパゲティ
にありつくとは思いませんでしたが、おいしかったです。

 さらに行くと、開けた眺望の場所があり、車を止めて眺めていると、後
から停まった車から、なんと裾をからげたまっ白なウエディングドレスを
着た人と、お婿さんが降りて来ました。
 結婚写真の前撮りアルバムのための撮影のようでした。そしてちょっと
遠くにさらにもう一組。
 写真屋さんと、衣裳係の女性、露出係の女性が2人にポーズをつけたり
ドレスの裾を広げたり。見ているとバックがちょっともやのかかった湖で、
いかにも幻想的でなるほど、いいロケーションだわと思いました。

 ぐるりとほぼ一周したあたりに、観光船の船着場がありました。船着場
周辺には、多数のみやげ物屋さんや、ホテルが立ち並び、ここが日月譚で
も一番のにぎわう場所のようでした。
 娘さんが、多数ある観光船の船頭に交渉に行ってくれました。加藤さん
の話によると、日本人だとわかると吹っかけられるから、私たちがいない
ほうがいいとのこと。娘さんは結構交渉がうまいらしく、小型船を700
元で貸切にしてもらったそうです。
 瀬戸内海の釣り船のような小さな船を操縦したのは、40代後半くらい
のたくましく日焼けした女性でした。船着場のホテル群が小さくなると、
湖の中は手漕ぎボートでデート中らしい男女やら、その他の観光船がとこ
ろどころに浮んでいましたが、水面は鏡のようにおだやかでした。

 先ほどふもとを通った蒋介石の母を紀念した高さ46mという慈恩塔が
遥かに見え、そのうちに中の小島に到着。
 驚いた事に、浮き桟橋の向こうの陸地と思ったドーナツ状の草地もぷか
ぷか浮いた浮島で、まん中のわずかに残った部分だけが水面から出た本物
の陸地でした。神社のような石段の下の方は水面下に没していました。
 これもあの台湾中部地震の名残で、以前はもっと水面に出ていたのが、
地震で沈んだのだそうでした。
 島から帰るときに対岸に見えた建物は、つい最近にニューヨークで100
何歳かで亡くなった、蒋介石夫人の宋美齢の別荘とのことでした。

 4時半ごろ、台中に帰り、加藤さんの気遣いで、果物屋さんに寄ってくだ
さり、マンゴーは時期はずれでなかったものの、見た事もなかった黄色の
スターフルーツ、りんごのような色の連露などを買ってくださいました。
植物検疫があるから、これは食べて帰らないと。
 
 5時にホテルに帰りました。翌日には日本に帰るので、飛行機のチケット
をフロントに見せ、搭乗のための手配をしてもらいました。
 部屋で早速加藤さんにいただいた果物の試食。
 実は台中のホテルに着いた時は、部屋にサービスのお菓子の替わりに果物
が置いてあったのですが、これがアメリカ産のフジ(りんごですよ)と、キ
ウイ。こっちはたぶんニュージーランド産。なんで?
 そのテーブルナイフを使って、買ってもらったスターフルーツを輪切り、
というかこの場合は輪、ではなく☆型ですが、角の部分をあらかじめ取って
から☆切りにして食べると、それほど甘みはなかったものの、ジューシーで
あっさりした味でした。連露は、りんごに似てさくさくして酸味のあるあっ
さりした味でした。

 夕食には、娘さんは彼氏とデートだそうで、加藤さん自ら運転の車で、台
中のごく庶民的な食堂、「猪脚大王」という豚足料理専門店らしいところに
連れて行ってもらいました。
 豚足の煮込み、「こてっちゃん」みたいな内臓の煮込み、スジの煮込み、
白菜の炒め物、ご飯、スープをいただきました。そのスープ、どれがいい?
と言われ、結局はしいたけにしたのですが、加藤さんは脳みその入ったスー
プでした。白子みたいな味なのだそうです。豚足の煮込みも、スジの煮込み
も、コラーゲンたっぷり、ぷるぷるした感じで大変おいしかったです。

 仕上げには、加藤さん言う「うっとこのヨメサン」がお勧めという、屋外
の喫茶店「天染花園」へ案内してくださいました。庭園の中の建物で、庭の席
は満席で、2階のテラスへ。夜風に吹かれ、ほの暗いランプの明かりで、こ
こでしか味わえないメニューがいいと、フルーツティーの夫は冷たいの、私
はホットを注文。
 ホットは、固形燃料にガラスのポット。中身はりんご、すだち、オレンジ、
その他台湾の果物が薄切りになってたっぷり入っていて、小さなガラスのカ
ップに注いで飲んでみると、さっぱりした酸味とお砂糖の甘み、香りが絶妙
でした。

 加藤さんの親切なご案内にほとほと感激しながらすっかりお世話になった
一日でした。
 この日、ホテルの部屋に帰ってテレビをつけると、ダイエーホークスがや
って来ていて、台湾のチームと試合をしたというニュースが流れていました。
ダイエーホークスの事は漢字で書くと、「大榮鷹隊」というのでした。各選
手のコメントも漢字で訳文が入っているのがなんだかおもしろく感じました。
1.加藤さんの娘さんと、乗せていただいたSAAB。

2.途中で売りに来た香蘭をぶら下げたところ。

3.観光客でにぎわう文武廟。

4.おみくじを引くところ。台の上の手のひら大の一対のソラマメ型の木を床に落として、そのおみくじ番号でいいかどうかの可否を占うのです。

5.おみくじ売り場の日本語をしゃべるおじいさん。ハリウッド映画の日本人俳優みたいな雰囲気。

6.玄奘寺門前のゆで卵を売る店。いい香りがそこらあたりにたち込めています。

7.湖をバックに、結婚写真の前撮りをしています。きっといいムードの写真になったでしょう。

8.湖の観光船着場。この階段の上の道路沿いはみやげ物やさんとホテルがたくさん立ち並んでいます。

9.湖のまん中の小島。地震で周りが水没。ドーナツ状のところは浮島です。

10.天染花園のフルーツティー。色、香り、味で楽しめました。それにほの暗いランプの明かりと夜の心地よい風と。
倉敷どっとと